遺跡発掘の仕事、寮は刑務所以下だった。

 何年も前の話だが、姫路城近くで遺跡発掘の仕事を1ヶ月ほどしてたことがある。

 ハローワークでの求人のネット検索で「寮」「遺跡」「発掘」などのキーワードを入力して出てきたのが姫路の会社だった。

 僕の実家からハローワークに行くには何十キロも離れたハローワークにバスで行かないといけなかったために、直接会社に電話で問合せをして、働かせてほしいと電話で伝えたら履歴書持って会社まで来てくれと言われたので、荷物をまとめて姫路に行った。 

 フェリーや電車を乗り継いで姫路まで行って、やっとの思いで会社に着いて、建物を見たときに驚いた。

 会社は大きめのプレハブ小屋を二段重ねにしただけの掘っ立て小屋に毛の生えたような建物だった。

 会社を見た瞬間に家に帰りたくなったが何万もかけて姫路まできて稼がずに帰るわけににはいかないと思い会社に入って面接を受けた。 

 面接ではただの世間話しかしなくて、直ぐに会社の二階の寮に案内された。

 部屋は3畳程度の広さで壁は少し厚い程度のベニヤ板で仕切られてるだけで何故か天井近くで30センチほどの間が開いてた。

 TVと布団以外に何もない部屋で3時間ほど寝て、夕方になると作業員の人達が帰ってきて挨拶をしに行った。

 大半の人は挨拶をしてもまともに返事を返してこなかったが、土木はこんなもんだろうと思い、それは気にならなかったのだが、後で「寮長」だという人から寮のルールを説明されて、そのルールに驚かされた。

 その寮には「就寝時間」というのが決められてて、その時間は何と、「夜の7時から朝の7時まで」だった。

 僕が、就寝時間に対して疑問をいっても寮長は「それが寮のルール」と言って全く聞き入れてもらえなかった。

 部屋には蛍光灯があるのだが蛍光灯は点けるなと言われた。理由を聞くと、隣の部屋に灯りが差し込んで迷惑だから点けるなと言われた。

 TVは見てても良いのか?と聞くと、TVの光が壁で反射して隣の部屋に迷惑なので見るなと言われた。 

 ようするに夜の7時になったら眠たくなくても朝の7時まで大人しく寝てろとのことだった。

 気になって調べてみたのだが刑務所の就寝時間は夜の9時らしいし、それまでは当然部屋には灯りがついてて部屋は明るい。

 僕は刑務所以下の環境で生活をすることになってしまった。

 僕は当時、ある勉強に熱心で勉強を続けるために、寮に入ったその日から部屋の畳の上で正座をして体を丸めて携帯電話のライトを使って勉強をすることになった。

 仕事の方は遺跡の発掘ということで地面を慎重に掘って発掘でもするのかと思ったら全く違ってスコップで必死になって掘ることを命じられた。

 土器の破片などが見つかったら、土器を除いて土は一輪車に乗せて所定の場所に捨てろと言われたのだが掘るのに必死で土器が混じってるかどうかの確認など、僕にはどうでも良かった。

 そんな生活を2週間ほど続けていたときだろうか、仕事が終わって「寮」という刑務所以下の部屋に帰ってきて就寝時間まで時間があったので、近所のコンビニに買い物に行った時に民家から漏れる灯りを見たときに目から自然と涙が出てきた。

 あ~あそこには家庭があって家族皆で食卓を囲んで食事をしたり、その日の出来事を話したりしてるんだろうと思うと、涙が止まらなかった。

 そこで働いて一ヶ月ほど経ったころに「寮」を夜に脱出することにした。

 隣の部屋の人などに気づかれないように慎重に荷物をキャリーバックに詰め込んで、置き手紙に「このクソヤクザどもが!」と書いて脱出して直ぐ近くのバス停からバスに乗って北海道に帰った。

 翌日会社から電話が掛かってきて出たら会社の社長は物凄い怒ってたが、怒ってた理由は、僕が逃げ出したことではなく置き手紙の「このクソヤクザどもが!」に対してだった。

 僕はもう気を使う理由もなかったので「あんな刑務所以下の環境で人を生活させといてヤクザも同然だ!」というとそれに対してまた怒ってきた。

 結局、そこで働いた分の給料は払われることはなかったが、それでも全然良かった。

 あんな酷い環境で今も生活してる人がいて、その環境に順応してる人がいると思うと今でも恐ろしく感じる、ほんと抜け出すことができてよかった。